京都教育大学附属高等学校 SSH行事

2004.11.2.(火)〜11.13.(土) センサーを用いた物理探究実験

11月2日(火)から11月13日(土)の本校教育実践研究集会での発表まで,3年生SSHクラス対象に「エネルギー科学 II 」の特別授業として,全10時間の取り組みです。

11月2日(火)
次のような趣旨で探求実験を始めることにしました。
 現代の研究者にとってパソコンによる計測や分析は必須となっている。外部の物理量をデータとして取り込むために,光センサーや電圧センサーなどの各種センサーが利用されている。
 高校生がこのような手法で実験に取り組み,未知のことがらを明らかにする過程の体験を目的として,今回のプロジェクトを計画した。実験テーマは班毎に異なる。
 さらに自己の研究を他者に伝え,理解を図ることも重要であり,発表会にも取り組む。

(1)実験ノートの取り方
しばらくの間班で実験を行う。いろいろな機器を扱い,データをたくさん取るため,記録が重要となる。班で共有する実験ノートの使用方法についての話し。  pdfファイルをご覧ください。

(2)対数グラフ
片対数グラフ両対数グラフの特徴やプロットの仕方,どのような分析に効果があるのか等を,実習を交えて学習。

(3)実験テーマの選択  
実 験 名 内              容
重力加速度 光センサーを使って,2種類の方法で重力加速度を測定する
ギターを調べる ギターの弦の長さと音階・振動数はどのような関係になっているのだろうか
リモコンの信号 テレビなどのリモコンから出る赤外線はどのような信号を送っているのだろうか
コンデンサーの特性 電気容量の公式を調べたり,充電や放電の過渡現象を調べる
乾電池の違い アルカリ乾電池とマンガン乾電池の違いは何か,新しい乾電池と古い乾電池の違いは何か
交流の位相 抵抗・コンデンサー・コイルを交流電源に接続し,電流と電圧の特徴を調べる

(4)予備実験開始
授業担当者が作成した素っ気ない実験書を見ながら,班で相談しつつ配線が組まれる。
 


11月5日(金)
2時間とも実験です。
ちなみに使用しているパソコン6台はLANで接続され,実験室内のカラーレーザープリンタで印刷できる環境にしています。
実験名 内  容
重力加速度 光センサーと懐中電灯を3本ずつ使用し,ボールを落下させて測定。
ギターを調べる 音センサーを使って弦の振動数を測定中。
1オクターブの12個の音階すべてを計測したので少々疲労が・・・・
リモコンの信号 リモコンからの赤外線を光センサーで受けて,パソコンにキャプチャーし,波形を分析。
各社のリモコンから調べやすいメーカーを選択するのも大変です。
コンデンサーの特性 実験用の大型コンデンサーで,極板間の間隔や向かい合った極板の面積を変化させ,電気容量を測定。
乾電池の違い すべり抵抗,電圧センサー,電流センサーを用いて実験。
実験そのものは数秒で終了だが,パソコン操作が大変。
エクセルでノイズデータを削除し,グラフを得ると達成感あり。
交流の位相 変圧器で交流電源を3V程度に調整し,デジタルマルチメーターや電圧センサー,電流センサーを用いて電源電圧の波形,最大値,瞬間値,実効値,周波数などについて討論。
パソコンには美しいsinカーブが見えます。


11月9日(火)
本日も2時間たっぷり実験です。
実 験 名 内              容
重力加速度 光センサーと懐中電灯,ボールの振り子を使用。単振り子を作り,周期を測定しているところ。
ギターを調べる 弦の振動数測定を別の方法(ストロボスコープ)で測定し,前時の音センサーの計測と一致するかどうかを見ます。
リモコンの信号 今日もリモコンと戦う3人。
(写真を取り忘れました。ごめん!)
1つのメーカーを選び,そのリモコンの1ch,2ch,3ch・・・・の信号を調べました。
コンデンサーの特性 コンデンサーで,充電中や放電中の電流・電圧特性を実験で調べるところ。
同時に微分方程式をたてて解を出し,数値シミュレーションを行って,実験とどの程度フィットするかも取り組んでいます。
乾電池の違い 新品の乾電池が思うように実験できず,おかしなデータばかり出てきます。疲れてきた様子。
交流の位相 抵抗・コンデンサー・コイルに流れる電流や,両端の電圧の測定をし,その位相のずれを検証しています。リアクタンスなどを求めるものの,疑問が続出か?

中には時間があるからと,下の写真のように10mほどの振り子で周期測定する班もありました。
4階と1階で連携はうまくできたのでしょうか。



11月10日(水)
本日は1時間だけです。そろそろ発表準備をしていきましょう。
大きい模造紙に要点を書く班や,パワーポイントを作成する班,まだまだ実験を続ける班などさまざまです。
  


11月12日(金)
発表当日です。
6つの班で各10分の制限時間を条件に,取り組んだ内容や成果などを報告しあいます。
この中から互選により,3つの班が明日の公開授業でプレゼンテーションします。
代表に選ばれた班は,放課後も残って準備をしていました。
  

  

 

この日の生徒の感想文より
・どの班も内容が違うので,聞いていておもしろかった。
・自分たちの説明が下手すぎでした。何とかなるだろうと思っていました。
・自分たちの実験を発表という形でまとめるのは初めてのことだったので,わかりやすい説明までは時間も足りず,うまくいかなかった。
・他の班の人がどんなことをしているのか全然分からなかったので,今日の発表ではそれが分かって良かった。
・こういうのはすごくいい感じだと思う。時間が足りなくて十分ではなかったが,今後役に立つことだろう。


11月13日(土)
本校の教育実践研究集会で公開授業をし,全国の先生方約30人に見て頂きました。
内容は
  重力加速度
  ギターを調べる
  リモコンの信号

です。

前日の夜,わかりやすいプレゼンテーションを突然思いつき,グラフを作成して臨む生徒もいました(4つめの写真)。
会場からも感嘆の声が上がりました。
 

 


レポートの感想より
・ギターのことがよく理解できた。一番面白かったのはストロボスコープで,センサーと同じ測定結果が得られたのは驚きだ。

・先生にヒントをもらいながらも,何とか自分たちで理論式を導き出して,それが実験結果に近いものだったときには感動した。

・交流電源にいろいろなものを絡ませて,そのデータをとってみて,理論値に近いものも多く,なるほど!と思う部分が多くあった。視覚的に分からない交流を扱い,データを入手することで頭の中だけでは分からない考えが膨らみ,交流に対して理解が大きく深まったと思う。

・リモコンの仕組みはこれまで特に気にしたことがないことであったが,調べてみると意外に単純な仕組みなのかも知れないと思った。マイクロ秒という一瞬の間にリモコンと受信機器の間でやりとりが行われているともうとすごい。

・今回の実験は生活の中にある身近なもので,普段から疑問になっていたことなので調べることができてよかったと思う。発表のときはとても緊張したが,良い経験になった。

・研究というのがどういうことか,少し分かってきた。

・実験を通して,考察することが大切だとわかった。何も分からない状態から始まった実験だけど,パソコンを使って測定し,グラフにしてイメージを掴みやすくして,グラフ式を出して,違いを探し考えていくという作業が,どんなに大切で難しいことかが分かった。

・他の班の発表を見て,すごいと思った。みんなもっとうまく説明していたし,発表の仕方もわかりやすく工夫されていた。自分もがんばらないとなあって思わされた。