研究の目的
本校は平成14年度から16年度までの「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の一つとして指定されました。「スーパー・サイエンス・ハイスクール」は将来の科学技術開発をになう次の世代を育成しようとする理数教育のプロジェクトです。
本校ではいままでの本校の教育の成果をもとに,さらに先進的な教育をめざしていくことを考えています。
この研究の概略を紹介しながら,私たちが考えていることを明らかにしたいと思います。
現在の教育においては「自ら学び自ら考える力の育成を図る」ための改善が行われているとはいえ,なお,体系化された知識の伝達に終始する教育が行われている場合が多く,理科や数学教育では「解決済みの課題(命題)」を生徒が追体験することが中心となっています。
次世代の先端的産業技術の研究や開発をになう人材を育成するには,自然や社会について物事の関連性の中から,生徒自らが課題を見つけ,高次元で具体的に解決していくプロセスを構築する学習を行う必要があると考えます。
そのため,私たちの京都教育大学附属高等学校では次の4つの目標を設定して上記の教育目標の実現を図ると共に,我が国の先進的な理科・数学教育の向上に資したいと考えています。
A
自然現象の法則性を理解し,その構造の解明に意欲的に根気よく取り組む生徒を育てる。
B
科学技術の開発に興味・関心をもって創造的に取り組む生徒を育てる。
C
意欲的に情報を取り入れ,表現・発信していく生徒を育てる。
D 社会における科学技術のあり方を考えられる生徒を育てる。
以上の目標を設定して,「科学技術研究・開発に意欲的・創造的に取り組む人間の基礎をつくる理数教育の研究開発」を行うこととします。
具体的には次の方法で行っていきます。
a 理科・数学の授業時間の増。
b 理科・数学境界領域の教材開発及び実践。
c 理科実験実習の一層の重視。
d 「学校設定科目」の設置。
e 大学・企業,研究機関と連携した指導。研究者等による講義の実施。
f 地域自治体(京都府等)の教育・研究活動との連携強化。
g クラブ活動等発表・発信の場の設定。
こうした研究のために各学年1クラスを「自然科学コース」と名付けて教育活動を展開しています。
@ 数学と理科の授業時間数の増加
具体的な教育課程は別表の通りですが,特に平成14年度の数学と理科については次のような点に重点を置いています。
学校設定科目「科学技術」で実験実習を一層重視し,大学や研究機関との連携に基づいて教材の開発と実践を行って,さまざまな「ものづくり 」を体験させ,理科の各領域における基礎的原理を理解と創造性の育成をはかる。
学校設置科目「応用数学T」では理科・数学境界領域の教材開発の一つとして,複雑な自然現象を分析・表現する基礎概念であるフラクタル を教材化して実践する。
「生物TB」では実験実習を重視して実験実習の高度化・精緻化,大学・企業や研究機関との連携の下での研修の機会を設定などに配慮して実施する。
「数学T」「数学A」では三角関数の導入教材の開発と実践を行うとともに,フラクタル次元のための対数概念を導入することを考慮して実施する。
こうした授業のための教材開発を京都教育大学,京都大学,京都工芸繊維大学,滋賀大学などの各大学,関西文化学術研究都市の研究機 関等と連携をしながら行っていきます。
A 研究者の招聘
先端的な研究開発を行っている著名な研究者をお招きして講演会を行います。研究者のお話の中から研究・開発にかける考えや心情を理解して生徒の動機づけを図る。
B 数学クラブ・科学クラブ活動への支援
数学クラブでは数学の学習内容だけにとらわれないで,生徒が興味をもつ数学分野を深く探究する場として設定します。
科学クラブでは理科の学習内容だけにとらわれないで,生徒が興味をもつ理科分野を深く探究する場として設定するとともに,その中で得られた成果を自治体の教育・研究活動と連携する中で地元の小中学生に還元することも考えています。
C 運営指導委員会
こうした研究は広く評価を受ける必要があります。本校におけるスーパーサイエンスハイスクールの運営に運営に
際して,指導助言を行っていただく有識者からなる運営指導委員会を設置しています。カリキュラムの研究開発内容
についての評価を受けることになっています。
平成15年度に運営指導委員をお願いしているのは次の方々です。
お名前 |
所 属 |
職 名 |
小林 祥一 |
日本電気化学梶C京都工業会推薦 |
取締役社長 |
原 資 |
鞄津製作所,京都工業会推薦 |
専務取締役 |
功刀 滋 |
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科 |
教授・学部長 |
中條 善樹 |
京都大学大学院工学研究科 |
教授 |
佐藤 文彦 |
京都大学大学院生命科学研究科 |
教授 |
笠原 三紀夫 |
京都大学大学院エネルギー科学研究科 |
教授・研究科長 |
東 あかね |
京都府立大学人間環境学部 |
教授 |
瀬原 淳子 |
京都大学再生医科学研究所 |
教授 |
加茂 直樹 |
京都女子大学現代社会学部 |
教授 |
小原 雄治 |
国立遺伝学研究所 |
教授 |
瀬戸口 烈司 |
京都大学総合博物館 |
教授 |
石原 慶一 |
京都大学大学院エネルギー科学研究科 |
教授 |
岡本 久 |
京都大学数理解析研究所 |
教授 |
手島 光司 |
京都教育大学教育学部 |
教授・副学長 |
生島 隆治 |
京都教育大学教育学部 |
教授 |
占部 博信 |
京都教育大学教育学部 |
教授 |
岡本 正志 |
京都教育大学附属教育実践総合センター |
教授 |