京都教育大学附属高等学校 SSH行事
2005.2.21.(月)〜28.(月) 特別授業「モデリング実習」
2年生SSHクラスにて,モデリング実習を行いました。
講師として京都教育大学の谷口先生を迎え,コンピュータルームにて実施しました。
●2月21日(月)
現代の科学の新しい手法であるモデリングについて,30分程度の講義。
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パソコン内部ではどのような計算を行うのか,またどのような計算式をプログラムすればよいのかを説明。
これを「step by step」と呼ぶ。
まずは手による計算で,簡単な等加速度直線運動の速度と位置(変位)の数値計算。授業で習った公式を使わないので,戸惑う生徒もいます。
10分休憩の後,次に「Modellus(モデラス)」というソフトウェアを使って,実習開始。
英語のソフトウェアですが,プログラム言語の知識がそれほど必要とせず,簡単にグラフやアニメーションが描けます。
モデラスのスクリーンショットはこちらをご覧ください。
この日はモデラスになれるため,ゲーム感覚のファイルで操作をしました。
また,課題として物体の投げ上げ運動をステップ・バイ・ステップの考え方でモデル化に取り組みました。飲み込みの早い生徒は,すでに放物運動(斜方投射)へと発展しています。
●2月23日(水)
本日は微分型のモデルの書き方から始まりました。
その後,水平投射を微分型で作成したり,斜方投射のモデルを書いたり。
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初日に戸惑ったり意味が分からなかった生徒もずいぶん慣れてきたようです。
自宅のパソコンにインストールし,どんどん取り組む生徒も出現。
生徒どうし,互いに教えあったり,自作のアニメーションを見せ合ったりと,盛り上がってきました。
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●2月25日(金)
本日は大学入試の日なので谷口先生は後半から参加していただきました。
前回に最後に出した課題の斜方投射について。
初速度の水平成分と鉛直成分を初期条件として与えるタイプは,多くの生徒ができていました。でも初速度と仰角を与えるタイプはあまりできていませんでした。難しいのでしょうか。
まず教員の作った斜方投射モデルを全員に見せてアニメーションがきちんと描けていることを確認した上で,「このモデルはあまり良くないです。それがなぜか分かりますか?」と問いかけました。(下がモデルを数式化したものです。これとは別に初期条件を与えると,動き出すのです!)
少し難しかったかも知れません。つまり物理法則や考えているモデルの数式化が重要で,できるだけ既知の公式を使わない方が今回のモデリング実習のねらいに合致するということです。あとで別の良い方の斜方投射モデル(下の数式です)を見せて,説明をしました。
運動方程式や物体に加わる力をどう考えるかが大切であることをよく考えて,次に下記4課題から1つ選択してモデル化に取り組みました。
(1)燃料を減らしながら進むロケット本当は1つの課題につき1名の生徒発表を考えていたのですが,時間の都合で1人だけ発表してもらいました(下写真はその様子)。
→ 運動方程式,速度や加速度の微分的記述
(2)空気抵抗力を受けながら鉛直に落下する物体
→ 運動方程式,速度に比例する空気抵抗力,速度や加速度の微分的記述
(3)液面から落とし,浮力を受けてやがて上昇する物体
→ 運動方程式,浮力,速度や加速度の微分的記述,
速度に比例する抵抗力のない場合とある場合
(4)ばねに取り付けたおもりの運動
→ 運動方程式,フックの法則,速度や加速度の微分的記述
速度に比例する抵抗力のない場合とある場合
(4)を上手にモデル化し,アニメーションや数値からモデルの正しさを強調しており,モデル化の結果どのように正しさを示すかを意識した発表となりました。
最後に波動を扱うために単振動に取り組みました。具体的には次のような実習をしました。提示したモデルは振幅がA=10,振動数がf1=100[Hz]の単振動y1で,t=0.0005ごとにステップするようにデザインされている。
これを元に,次のモデルを作成してみましょう。
(1)振幅は同じで振動数が5Hz異なる単振動y2を追加し,Animationウィンドウで縦軸をy2,横軸をtとしてプロッターも追加して下さい。
(2)さらにy3=y1+y2を追加し,y3を描くプロッターも追加して下さい。
(3)このy3は何を表していますか? また公式も確認してみよう。もし図が見にくい場合は,何を工夫すればいいですか? またGraphウィンドウも使ってみましょう。
(4)caseを利用してf2を2倍振動や3倍振動にし,そのときの合成波形を見て下さい。
●2月28日(月)
実習最終日です。
まず谷口先生に,どのようなモデルを選ぶのか,現実に起こりうるモデルで,ある程度結果が予測可能な方がモデルの検証をしやすいことなどを話していただき,実習スタート。
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本日の課題は,各自課題を見つけてモデリングする,というものです。
適当なものが見つからない場合は,次の中から1つ選択してモデリングすることにしましょう。
(1)モンキーハンティング
(2)缶ジュースをストローで飲んでいるときの系の重心移動モデル
(3)等速円運動と単振動の関係を表示
(4)n倍振動の重ね合わせ,およびそれぞれの振動の振幅を調節したときの波形の変化
(5)底面積100[m2]の円筒形タンクに水が深さ5[m]だけ入っており,現在,水が毎秒10リットル注ぎ込まれている。同時にタンクの底の穴から,水の深さに比例した水量が流れ出している。初めは水の深さが5[m]で一定であった。20秒後から注入する水量を1.5倍にしたとき,何秒後にタンクの水の深さは一定になるだろうか。またそのときの水の深さは何mだろうか。水の深さの変化を表すグラフも作成してみよう。ただしタンクの深さは十分深いとします。
生徒達は夢中で取り組む者が多く,事後アンケートで分かったのですが,とても楽しく,また物理の学習内容をよく使い,同時にいろいろなことを考えながらモデリングしていたようです。
できたモデリングファイルは,3月4日(金)が提出締切です。説明のレポートもつけて提出しよう。
右は指導教員が作ったリサージュ図形です。簡単にできます。