正十二面体のひとつの頂点Xをとる。一匹のアリがXを出発し、正十二面体の辺上のみを歩き、X以外のすべての頂点をちょうど1度ずつ通過して、Xに戻ってきた。アリの歩いた経路として考えられるものは何通りあるか。ただし、回転で重なり合うような経路や、道順が逆になっただけの経路も、異なるものとして数える。
正十二面体のひとつの面に穴を開け、広げて平面状にすべての面を押し付ける。その際、各面の形はこの問題を考えるに際して関係ないので、右図Tのようであるとしてもよい。ただし、元々の正十二面体の対称性から考えて、Xを出発した後、赤、青、黄のいずれに進むにしても、その後の経路の個数は同じであると考えられる。よって、青の方向に進んだ後の経路を、3倍すればよい。 | ![]() |
図Tで青の方向に進んだ後、図Uのように、黄色と赤の2方向に進むことが出来るが、これも正十二面体の対称性から考えて、その後の経路の個数は同じである。 よって、図UでXから青赤と進んだ後の経路を6倍すればよいことになる。 また、青赤と進んだら、黄色の線は通ることが出来ない。よって、緑の線を通らねばならないことになる。 |
![]() |
青赤と進んだ後は、図Vのように、経路1と2に分かれる。この2つの経路については、対称性がないと考えられるので、順次考えていくことにする。次の図Wでは、既に選ばれた経路は青で塗り、今から選ぶべき経路は赤と黄に塗ってある。また、既に選ばれた経路により通ることが出来なくなった線は灰色に、通らねばならなく成った線は緑に塗る。 | ![]() |
図Wを用いて経路がどのように決定されるかを説明する。図Wは、Xから出発して図Vでの青線を通り更に1を選択したところから始まる。ここで、図Wのえかエを選ぶことになるが、ここではえを選んだものとする。まずあいを通ったことによりアが通れなくなる。すると、abを通らなければならなくなる。次にいうを通ったことによりイが通れなくなる。すると、cdを通らなければならなくなる。acを通ったことによりウが通れなくなる。すると、efを通らなければならなくなる。うえを通ったことによりエが通れなくなる。すると、ghを通らなければならなくなる。dgを通ったことによりオが通れなくなる。すると、iを通らなければならなくなる。えを通ったことによりカを通るとXに戻ってしまうので、カを通れなくなる。すると、jkを通らなければならなくなる。これであいうえkと通ってきて1と2を選択することになったが、いずれを選択しても、1通りしか経路が無いことが見て取れるだろう。1を選択した場合3回の選択で順次111と選んで経路が決定し、2を選択した場合3回の選択で順次112と選んで経路が決定したことになる。この選択のパターンを、図111,図112のように表していく。ただし、選択が行われているところには数字を書き、選択した経路は青で、選択されなかった線と結果として通れなくなった線を赤で、通らねばならなくなった線を緑で表現する。また、見た目で後一通りしかないと分かるところまでを表現する。 | ![]() |
![]() |
111から22222までの10通りがあるので、求める経路の総数は、10×6=60通りである。
2007年度の新入生に、上図を与えすべての経路を見つけさせてみたが、9通りまでしか見つかられなかった。元々の解答は、正一二面体を上下2つに切って広げていたので更にややこしかった。