2006年日本数学オリンピック予選 問題10

解答者 津山 竣太郎 2007年6月

問題文

正十二面体のひとつの頂点Xをとる。一匹のアリがXを出発し、正十二面体の辺上のみを歩き、X以外のすべての頂点をちょうど1度ずつ通過して、Xに戻ってきた。アリの歩いた経路として考えられるものは何通りあるか。ただし、回転で重なり合うような経路や、道順が逆になっただけの経路も、異なるものとして数える。

解答

 正十二面体のひとつの面に穴を開け、広げて平面状にすべての面を押し付ける。その際、各面の形はこの問題を考えるに際して関係ないので、右の図Tのようであるとしてもよい。

次に五角形PQRSTと十角形FGHIJKLMNOを考える。例えば、OTを通ると、GPIQKRMSのうちいずれか1つを通らなければ、周囲(ABCDE)に戻れない(場合1)。また、外から中へ2回進むと、中から外へ2回進まなければ、周囲(ABCDE)に戻れない(場合2)。

そこで、場合1について考える。まず、図2のようにOTIQを通ることにすると、GPKRMSは通れないことになる。このとき、SRを通るためには、TSRQと進まなければならない。同時に、Pを通るためにはTQRと進まなければならない。従って、OTIQのような選び方は不適である。従って、2本の選び方は五角形PQRSTの隣り合う頂点を選びその頂点を含む2本を選ぶ方法しかない。この方法は5通りある。例えば、図3のようにOTGPを選んだとすると、IQKRMSは通れないことになる。このとき、SRQを通るためには、図4のようにTSRQPを通らなければならない。さらに、IKMを通るためには、図4のようにHIJJKLLMNをとおらなければならない。

同様に、CJDLは通れないことになるので、BCDCDEを通らなければならない。また、GFOと通ることはできないので、AFは通らなければならない。次に、GFOFのどちらかを通らなければならないので、ここでGFを通ることにする(図6)。すると、OFは通れないのでONを通ることになる。さらに、ENが通れなくなるので、EAを通ることになり、ABが通れないので、BHを通ることになる(図7)。これで経路が決定した。よって、この経路のとり方は、OTGPのとり方が5通り、GFOFのとり方が2通り、さらにAFと進むかFAと進むかの2通りあるので、5×2×2=20通りある。

次に、場合2について考える。まず、5PQRSTから4点選ぶ方法は5通りある。例えば、4PQRSを選んだとする。すると、GPIQKRMSを通るので、OTは通れないことになる(図8)。従って、Tを通るためにはSTPを通らなければならない。するとQRも通らなければならない。また、Oを通るためにはFONを通らなければならない。さらに、IJKを通ることはできないので、Jを通るためにはCJを通らなければならない(図9)。次に、IJKJのどちらかを通らなければならないので、ここでIJを通ることにする。すると、KJIHは通れないので、KLGHHBを通ることになる(図10)。

次に、DLLMのどちらかを通らなければならないので、ここでDLを通ることにする(図11)。すると、CDLMは通れないのでDECBMNを通ることになる(図12)。従って、ABFGは通れないので、AFAEを通ることになり経路が確定する(図13)。また、LMを通ることにすると、DLMNは通れないので、CDEENを通らなければならない(図14)。従って、BCAEが通れないので、BAFを通り経路が確定する(図15)。よって、この経路のとり方は、5PQRSTから4点選ぶ方法が5通り、IJKJのとり方が2通り、DLLMのとり方が2通り、さらにAFと進むかFAと進むかの2通りあるので、5×2×2×2=40通りある。

以上より、総数は20+40=60通りである。