生徒が夢中になる授業のアイデア
京都教育大学附属高等学校 高田哲朗
塾や予備校に通っている生徒の率は近年上昇し続けている。そのような生徒は学校の授業や教師に対して厳しい眼を向けていると、感じることがよくある。「興味がない、面白くない、役に立たない」と授業に見切りをつけた途端、生徒の授業中の態度は劇的に変化する。居眠り、内職が始まるわけだ。教師にとっていたたまれない瞬間である。
塾や予備校で習うことを、学校で同じような指導法で教えていても生徒はついてこない。「学校の授業でしか学べないことで、しかも生徒が学ぶ必要性を感じるような内容を提供すること。」「塾や予備校でも教えてもらえることは、料理の仕方を変えること。」この2つは、生徒が夢中になる授業へ改造するためのカギである。
生徒が夢中になる授業のアイデア
1.ペアワークの活用 ― 教室の前に教師が一人立って一方的に話している形態の授業から、生徒全員が立って活動する場面のある授業へ転換しよう。そのためにはペアワークが有効である。ペアワークは原則として起立させた状態で行わせ、終わった者から座らせるようにする。実際、ペアワークは授業のほとんどどんな場面でも可能である。たとえば、音読の際、ペアで交互に読ませる(Pair Reading)だけでも授業は確実に活性化する。また、Read & Look-upを一方の生徒にやらせ、他方の生徒に聞き役(チェック役)をさせる。キーワードをブランクにしたワークシートを用意し(教材例@)、ペアでパラグラフごとに交代して、ブランクを補いながら英文を読ませる。直読直解の練習として、一方がチャンクごとに本文を音読し、他方が文字を見ずに相手の音読を聞きながらチャンク単位で日本語に直していく。(通訳練習と称している。)この練習には、チャンク単位で区切って中央揃えしたプリントを用いるとやりやすい。(教材例A)文法問題も、教師が一人の生徒を指名してやらせると残りの生徒はつい眠くなるものである。そんな時、ペアを作って、一方が問題を読み、他方が解答するのを交互にやらせた後、全員で答えを確認するというように、ペアワーク取り入れると、全員を巻き込んだ授業展開が可能となる。こうすれば、生徒の眠気は間違いなく吹っ飛んでしまう。
2.ライティング活動は書く相手を意識させよう― e-mailまたはP-mail
これまでのライティングの授業では、テーマを与えて書かせるいわゆる「自由作文」をさせる際、生徒は暗黙のうちに教師に対して作文していたわけである。しかし、生徒に自分の書きたい相手に書きたいことを書く自由を認めたとき、驚くほど意欲的に書こうとし、書く活動を実に楽しそうに行うものである。e-mailを活用すればこのような活動を自然な形で行うことができる。外国に姉妹校提携している学校があれば、e-mailによる国際交流はやりやすい。もしこのような環境が整っていないなら、同じ学校でクラス間交流や学年間交流をやってみてはどうか。その際、e-mailの代わりに紙を使ってのメール交換(P-mailと称している)を行うと、英語での交流を手軽にしかも楽しく行わせることができる。(教材例B)
3.生徒の相互評価を取り入れよう
評価を教師の専売特許にするのではなく、生徒にもお互いの評価活動に参加させることから得られるメリットは大きい。友達が自分の活動を評価してくれていると意識するだけで生徒は熱心になるものである。また、評価者になって初めて気がつくことも多い。音読、スピーチ、自由作文などアウトプットなら何でも生徒同士の評価活動を取り入れてみてはどうか。(教材例C)