京都教育大学附属高等学校 SSH行事

2004.9.17.-10.01 センサープロジェクト

9月17日(金)から10月1日(金)まで,2年生SSHクラス対象に「エネルギー科学 I 」の特別授業として,全14時間の取り組みです。
京都教育大学から谷口先生にお越しいただき,指導していただきました。

●9月17日(金) センサー回路の基礎 −電位分割器の原理−

この特別授業「センサープロジェクト」では,実際に研究者や技術者も用いている,便利な測定器や道具を用いて実験を行います。はじめに,これからはじまる一連の実験の内容をよく理解し,この授業の最後に目的に応じたセンサーシステムを組むことができるようになるための準備として,デジタルマルチメーターの使い方と抵抗の直列回路電位分割器について学習します。積極的に手を動かして,さまざまなことを発見し、その原理について考えてみてください。


実際に実験が始まると,初めはおそるおそるデジタルマルチメーターを使っていましたが,そのうちいろいろなものをどんどん測定していきます。
携帯電話の充電器の電圧,乾電池の電圧,ボタン電池の電圧,使い古した電池の電圧,自分の体の抵抗,1kΩの抵抗を10個直列に接続してあちこちの電圧などなど。


実験にはブレッドボードという道具を使っています。これは下図のように穴が多数あいていて,はんだ付けすることなく回路を組めるのでとても便利です。


●9月22日(水)

9月17日の続きです。
電位分割の実習と定抵抗可変抵抗を用いて電圧の変化をマルチメーターで見ています。


電位分割」という概念はあまり中学や高校で取り上げません。抵抗を使って電圧を分け,目的の電圧を作り出すわけです。センサーシステムを作り上げる上でとても重要な手段です。ここでは詳細な説明を省きます。あしからず。

●9月24日(金) センサープロジェクト −センサーシステムを作ろう−

班毎に違うテーマで取り組みます。午前中の4時間かけた実験に,生徒達も没頭していました。


テーマは次の中から1つ選んで取り組みます。
 A 明暗を光で知らせるセンサーシステム作り
 B 明暗を音で知らせるセンサーシステム作り
 C 熱いことを光で知らせるセンサーシステム作り
 D デジタル温度計作り
 E 光の急激な変化を調べる


光依存性抵抗(LDR),フォトダイオード,フォトトランジスタ,サーミスタ
といった素子をデジタルマルチメーターやオシロスコープ,ストロボスコープ,温度計などをもちいて,特性を調べていきます。熱湯やかき氷をたくさん使った班もありました。



見たこともない機械を教えてもらいながらの実験でしたが,みんな楽しそうに実験していました。
でも時には理解できない現象があったり,思った通り作動してくれなかったり,計算したとおりセンサーが働いてくれなかったり・・・・ そのたびに班で討論が巻き起こり,目的に向かって解決していきました。

最終的にはすべての班で,目標達成となりました。あとは発表会(プレゼンテーション)に向けて,準備作業です。

●9月27日(月) 発表準備

班毎の発表に向けてポスターやグラフを書いたり,でも実験の準備をしています。でも実験の遅れている班はまだデータを取ったり,調整をしたり。
どの班もとても忙しいそうでした。


●9月29日(水) 発表準備(雨天のため体育祭が順延となった)


●9月27日(月) 発表会(プレゼンテーション)

全10班が持ち時間8分で発表します。以下の内容で報告してもらいました。

  プロジェクトの目標
  センサーの特性
  回路の説明
  デモ実験
  分かったこと

ここでは発表順に並べます。

A 明暗を光で知らせるセンサーシステム作り

周囲が明るくなると発光ダイオードが光って教えてくれるセンサー,その反対に周囲が暗くなると発光ダイオードが光って教えてくれるセンサーを作りました。
  

E 光の急激な変化を調べる

光依存性抵抗とフォトダイオードの応答性の違いを調べました。光源はストロボスコープやテレビのリモコンから発する赤外線などです。テレビのリモコンの信号はどのようにして情報を伝達しているのか,発表がありました。
  

B 明暗を音で知らせるセンサーシステム作り

周囲が明るくなると電子メロディが鳴って教えてくれるセンサー,その反対に周囲が暗くなると電子メロディが鳴って教えてくれるセンサーを作りました。
  

D デジタル温度計作り

デジタルマルチメーターの電圧計の表示が,そのまま温度を示しているような回路を設計しました。サーミスタの特性をうまく利用し,定抵抗をいろいろ探りながら誤差の少ない温度計を実現しました。
  

C 熱いことを光で知らせるセンサーシステム作り

水を沸かしていて,一定の温度(たとえば60℃)になると発光ダイオードが光るセンサーです。
知らせる温度を設定できるように可変抵抗をうまく利用した報告があり,授業を担当した教員もびっくり!
  



生徒の感想より
・実験方法通りにやるだけじゃなくて,自分たちで,じゃあ,次にこうしたらどうなるだろうと思って新たな実験をして,データを取ったりしているのを見て,とてもすごいなぁと思った。

・C2班の発表がすごかった。いろいろなセンサーの仕組みがよくわかりました。

・発表の時オルゴールが鳴らなくてあせった。もう少しちゃんと準備しておくべきだった。人に説明するのは難しいことだと思った。


レポートより
・はじめ,この実験を行うと知ったとき,正直理解できるか不安だった。実験を進めていてもなかなか理解できなかったけれども,回を重ねるたびに,徐々に分かってきたし,最後の方には精度の高いデジタル温度計になるように試行錯誤するようになったし,最終的に近い値を求めることができるようになって本当に良かった。

・今まで「複雑な回路で組まれていて難しそう」というイメージを持っていたセンサーシステムは,実は基本的な理論と単純な回路で構成されていて。それらは高校生レベルの知識で容易に作れるということを学んだ。

・それぞれの実験から得られたデータをどう解釈するかという「分析力」や「結果を予想する力」を身につけることができた。さらには,自分の班が出した結論を含めて実験について発表するというプレゼンテーションの機会もあり。どうすれば分かりやすいかという「見せる力」も学ぶことができた。

・自分でグラフや数式を用いて理想的な値を導き出すことができたときは,とても感動的だった。

・前々からセンサーの仕組みについては興味を持っていた。回路を作るのは難しいのではないだろうかと思っていたが,オームの法則を用いれば,私たちでも感嘆に作ることができたので驚いた。

・今までの実験は,先生からどんな実験をやればよいのか教えてもらい,そのとおりに実験をするというものだった。しかし今回の実験は,センサー回路は自分たちで考え,試行錯誤しながら作らなければならなかった。難しかったが,今までで一番SSHらしい実験ができたと思うし,考えるということがこんなにも楽しいことなのかと思った。センサー回路ができたときは本当にうれしかった。

・自分たちで考えながら何かを作り出すということはあまり学校では行わないことだったので,プロジェクトが始まる頃は本当にやり遂げられるか少し心配だった。初日の基本実験では,プリントに従ってただ実験するだけだったが,だんだん班の4人で話し合って,何が必要なのか,センサーを製作するには何をしなければいけないのかを考えながら実験できるようになってきた。私は何度も実験する中で,そのように意味を考えながら実験をすることの大切さを実感した。

・プロジェクトが始まる前まで,センサーの仕組みをほとんど知らなかったので,製作は手探りで少しずつ行った。完成した作品をテストすると,思ったより良い結果が得られたことが嬉しかった。実験で得られたデータをうまく利用してものを作ることの楽しさを知ることができたし,実験が終わってから,結果を考察し,話し合うことの重要性を実感することができ,有意義な時間になったと思う